2009年12月03日
大工さんの考え方(4)


No.3まで書いて諸般の事情で止まっていた、このシリーズ。
さりげなく自分自身に振ってしまった「いい家って何でしょう?」
難問です(笑)。
間違いない答えは「施主さんが満足する家」。
ローコストで20年程度で立替える家を建て主が求めるなら、それが「いい家」なんでしょう。
自分とは正反対の価値観もまた然り。
「いい家」の基準は無いに等しいと思います。
大壁づくりで、見えなくなってしまう柱でさえ「手カンナで仕上げる」大工さんもいます。
これも大工さんのこだわりですが、「施主が望んでいるかどうか?」とは別の次元の話です。
大工さんにとって、自分の造った家が、20年程度で壊されるなら、気持ちも手間も入りません。魂の無い家です。
「100年、200年、住んでもらいたい。」
そう思うから、「施主が望むかどうか」とは別の「心」が入るのです。
とはいえ、理想と現実の中で、大工さんも、悩みながら黙々と仕事を進めていきます。
200年後に自分の建てた家が老朽化で取り壊される時、
「この家を造った大工はいい仕事をした」
と遠い未来に評価してくれる人がいるかもしれない。
解体された家の木材がまた再利用される可能性があるとすれば、材木屋も遠い未来を見据えて仕事をせねばなりません。
※写真は「お施主さんと一緒に丸柱の皮むきをしているところ」
2009年10月06日
大工さんの考え方(3)


弘法筆を選ばず、とでも言いましょうか。
技術のある大工さんは、どんな木でもそれなりに使ってしまいます。
必ずしも銘木や素性の良い木ばかりを求めるのではないようです。
腕のいい大工さんは、さぞかし木のいい家に住んでいるのかというと…。
実はそうではないと聞きます。
ついつい必要以上に施主さんのために腕を振るってしまい、お金がたまらなかったり、道具にお金を注ぎ込んだりと、自分の生活にまでお金が回らないのだそうで…。
ですから、必要以上に良い木を高く買う事もなく、多少難があっても、安く買った木を、ちゃんとそれなりに使う。
これが腕のある大工さんの技術。
製材所は、腕のある大工さんに「良い木を売り込みたい」のですが、残念ながら、いつも空振りです(笑)。
いい家づくりに、良い木はいらない?ってのも何となく寂しいのですが…。
…ところで、「いい家」って何でしょう??
タグ :大工さん
2009年09月29日
大工さんの考え方(2)


構造材の継ぎ手は木造建築で欠かせないものですが、同じ繋ぐにしてもいくつも方法があります。
プレカットでは出来ない「技」が見れるのも、継ぎ手や仕口。
でも、本来は見せるものではなく、隠れてしまうもの。
「技をひけらかすなんて粋じゃねえ」
というのが大工さんの考え方かもしれませんが、私は意匠として積極的に見せてもいいんじゃないかと思ったりします。
美しく組み合わされた木材。それがまた木を引き立てる。
「追っかけ大栓」という継ぎ手は、継ぎ手の中でも最大の強度があるそうですが、それでも繋がない木材の20〜30%しか強度が出せないそうです。加工するにも、一日がかりとか。こんな面倒な継ぎ手でも、
「一番強いから、追っかけで組む。」
という大工さん。細い母屋角まで追っかけ大栓で組み上げていました。
(写真は追っかけ大栓ではありません)
さて、こんなこだわりの大工さんが、「いい木」を積極的に使ってくれるかというと…。
実は、そうではないんですよ。。。
2009年09月25日
大工さんの考え方(1)


この写真は柱の中を「貫:ぬき」を貫通させて繋げる「通し貫」と言われる工法です。
久しぶりに通し貫の現場を見ました。金物は使用しません。
筋交よりも「強い」とされるやり方ですが、殆ど見る現場がありません。
外の光に透けて、「アラシ」と呼ばれる横長の材が外壁の下地としてスノコ状に張られています。
この「アラシ」工法も見られる現場は皆無となりました。
こうした工法で施工されないのは、「手間がかかるから」に他なりません。
現在殆どの住宅は、下地材なしで、コンパネをペタペタと構造材に貼付けて、壁を作ってしまう「直張り」工法。
手早く出来るし、耐震性もよいコンパネ。
でも、きっと長持ちはしません。永く住まう家にはならないでしょう。
限られた時間と予算の中でも、自分の「良し」と思う方向に向かう大工さん。
効率や「銭儲け」を考えたら、出来ない事。それをやるのが、
「本物の大工さん」
こういう大工さんに出会うには…。